クレーン性能検査の期限切れはどうなる?更新の流れと対処

クレーン検査証の有効期間(原則2年)が切れたクレーンは、使用できません。検査証を受けていないクレーンの使用は労働安全衛生法第40条第1項で禁じられ、違反は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(同法第119条)。対象は、検査証が交付されるつり上げ荷重3トン以上(スタッカー式は1トン以上)のクレーンです。
期限切れに気づいたら、まず運転を止め、所轄の労働基準監督署に今後の手続きを確認してください。この記事では、性能検査の仕組み、期限切れに気づいたときの対処、期限内に検査証を更新する流れ、期限切れを防ぐ管理の方法を解説します。
性能検査と検査証の有効期間
つり上げ荷重3トン以上のクレーンは、設置後の落成検査に合格すると検査証が交付されます。検査証には有効期間があり、使い続けるには期間が切れる前に性能検査を受けて更新します。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象 | つり上げ荷重3トン以上(スタッカー式は1トン以上)のクレーン | 労働安全衛生法施行令第12条第1項第3号 |
| 検査証の有効期間 | 2年(落成検査の結果で2年未満とされることもある) | クレーン等安全規則第10条 |
| 更新の方法 | 登録性能検査機関が行う性能検査を受ける | 労働安全衛生法第41条第2項 |
| 検査の内容 | 各部の構造と機能の点検、定格荷重に相当する荷での荷重試験 | クレーン等安全規則第40条(第34条第4項を準用) |
| 更新後の期間 | 原則2年。検査の結果により2年未満、または2年を超え3年以内とされることもある | 同規則第43条 |
つり上げ荷重3トン未満のクレーンには検査証がなく、性能検査もありません。ただし、月次・年次の定期自主検査は荷重にかかわらず必要です(同規則第34条・第35条)。荷重ごとの手続きの違いはクレーン設置報告書・設置届はいつまで?で解説しています。
期限切れのクレーンを使うとどうなるか
- 使用の禁止:検査証を受けていない特定機械等は使用してはならないと定められています(労働安全衛生法第40条第1項)。有効期間が切れた検査証では、この要件を満たしません。
- 罰則:第40条第1項に違反した者は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとされています(同法第119条)。
- 事故のときの責任:期限切れのまま運転して事故が起きれば、法令違反の状態で使っていたことが問われます。
- 取引先への影響:監査や安全パトロールで指摘されると、是正まで設備を使えず生産計画にも響きます。
点検そのものを怠った場合のリスクは天井クレーン点検をしないとどうなる?で詳しく解説しています。
期限切れに気づいたときの対処
有効期間が切れていることに気づいたら、次の順で対応します。
- 運転を止める:誰かが使わないよう、操作スイッチの管理と「使用禁止」の表示をします。
- 検査証を確認する:有効期間の満了日、クレーンの型式、検査証の番号を確認します。
- 所轄の労働基準監督署に相談する:どの検査を受ければ再び使えるかは、休止の報告をしていたかどうかなどの状況で変わるため、自己判断せずに指示を受けます。
- 点検・整備を依頼する:止めていた期間の劣化を確認し、検査の前に必要な整備を済ませます。
- 指示された検査を受ける:合格して検査証の有効期間が改めて定まってから使用を再開します。
あらかじめ休止の報告をして、有効期間を超えて使用を休止していたクレーンを再び使う場合は、使用再開検査を受けます(クレーン等安全規則第48条・第49条)。報告をしないまま期限が切れた場合の扱いは監督署の判断になるため、必ず事前に確認してください。
期限内に検査証を更新する流れ
期限切れを起こさないための基本は、有効期間の満了日から逆算して準備を始めることです。
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 満了日の確認 | 検査証の有効期間を台帳に書き出す | 複数台あれば満了日の早い順に並べる |
| 2. 検査機関への申込み | 登録性能検査機関に検査を申し込む | 繁忙期は日程が取りにくいため早めに |
| 3. 事前の点検・整備 | 点検業者に検査前の点検を依頼し、指摘を直す | ワイヤロープやブレーキなど指摘の多い部位を先に確認 |
| 4. 荷と玉掛用具の準備 | 荷重試験のための荷と玉掛用具を用意する | 検査を受ける側が準備する(クレーン等安全規則第42条で第7条を準用) |
| 5. 検査当日 | 立会いのもとで点検と荷重試験 | 検査を受ける者は立ち会う(同上) |
| 6. 検査証の更新 | 合格すると有効期間が更新される | 新しい満了日を台帳に記録する |
検査の前の点検・整備と、荷重試験用のウエイトの手配は、点検業者に任せられることが多い作業です。年間の保守契約に検査への対応を含めておくと、手配の漏れを防げます(天井クレーンの保守契約)。
使わない期間があるとき・廃止するとき
| 状況 | 必要な手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 有効期間を超えて休止する | 有効期間中に、所轄の労働基準監督署長へ休止を報告する | クレーン等安全規則第48条 |
| 休止していたクレーンを再び使う | 使用再開検査を受ける | 同規則第49条 |
| 使用を廃止する/3トン未満に変更する | 遅滞なく検査証を所轄の労働基準監督署長に返還する | 同規則第52条 |
| 検査証をなくした・傷めた | 再交付を申請する | 同規則第9条第2項 |
しばらく使わない予定のクレーンこそ、満了日の前に休止の報告をするかどうかを決めておく必要があります。撤去して廃止する場合の費用と手続きは天井クレーンの撤去費用で解説しています。
期限切れを防ぐ管理
期限切れの多くは、担当者の交代や、点検と検査を別々に管理していることから起きます。次の3つを1つの台帳で管理すると漏れにくくなります。
- 検査証の有効期間の満了日(3トン以上のクレーンごと)
- 年次の定期自主検査の実施日(1年以内ごと)
- 月次の定期自主検査の実施日(1か月以内ごと)
年次の自主検査を行う日の前2か月以内に性能検査の荷重試験を行ったクレーンや、自主検査の日の後2か月以内に検査証の有効期間が満了するクレーンは、年次の自主検査での荷重試験が不要になります(クレーン等安全規則第34条第3項第1号)。年次点検と性能検査の時期をそろえておくと、荷重試験の手間を重ねずに済みます。点検の期限の管理方法はクレーン点検の期限管理も参考になります。
よくある質問
Q. 3トン未満のクレーンにも性能検査はありますか?
A. ありません。性能検査と検査証は、つり上げ荷重3トン以上(スタッカー式は1トン以上)のクレーンが対象です。ただし月次・年次の定期自主検査と記録の3年保存は、0.5トン以上のクレーンに必要です(クレーン等安全規則第34条・第35条・第38条)。
Q. 性能検査はどこに申し込みますか?
A. 検査証の有効期間の更新のための性能検査は、厚生労働大臣の登録を受けた登録性能検査機関が行います(労働安全衛生法第41条第2項)。申込みの方法と日程は検査機関に確認してください。点検業者が申込みや準備を手伝ってくれる場合もあります。
Q. 有効期間の満了日を過ぎて1日だけ使ってしまいました。どうすればよいですか?
A. すぐに運転を止め、所轄の労働基準監督署に状況を伝えて、再び使うために必要な手続きの指示を受けてください。期限切れの期間が短くても、検査証のない状態での使用に変わりはありません。
関連記事
- クレーン設置報告書・設置届はいつまで?対象トン数と提出先
- 天井クレーン点検をしないとどうなる?罰則・事故リスク
- 天井クレーンの保守契約|メンテナンス費用と契約内容の確認点
- クレーン点検項目一覧|月例点検・年次点検・定期自主検査の違い
出典・参考
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索):第40条第1項(使用等の制限)、第41条第2項(性能検査)、第119条(罰則)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索):第12条第1項第3号(特定機械等)
- クレーン等安全規則(e-Gov法令検索):第7条(落成検査を受ける場合の措置)、第9条(クレーン検査証)、第10条(検査証の有効期間)、第34条・第35条(定期自主検査)、第38条(記録)、第40条(性能検査)、第42条(性能検査を受ける場合の措置)、第43条(検査証の有効期間の更新)、第48条(休止の報告)、第49条(使用再開検査)、第52条(検査証の返還)
