クレーン点検の受注引継ぎ|営業から現場へ渡す情報チェックリスト

受注した見積が現場へ渡るとき、金額と作業名だけでは段取りできません。顧客が指定した工場停止時間、対象号機、入構手続き、報告書様式、支給品、未確定事項まで共有されて初めて、営業の約束と現場の準備が一致します。受注確定を「現場へ渡せる情報がそろった状態」としてチェックすることが重要です。
この記事では営業から現場へ渡す情報を整理します。施工手順や安全上の作業判断は現場責任者の管掌として扱います。
引継ぎ開始の条件を受注基準とそろえる
「口頭でほぼ決まり」と「受注確定」を混ぜると、現場が仮予定を確定と誤解します。注文書、メール了承など、自社が受注と認識する証拠を決め、案件番号、採用された見積番号と版、回答者、回答日時を記録します。
営業段階の全体はクレーン点検会社の営業案件管理、見積版の扱いはクレーン見積書の版管理を参照します。
引継ぎ票は七つの情報群に分ける
| 情報群 | 主な項目 | 確認元 |
|---|---|---|
| 受注 | 案件番号、見積番号・版、受注日、注文番号 | 顧客回答、注文書 |
| 顧客 | 会社、工場、現場窓口、請求先 | 顧客台帳 |
| 機器 | 機器ID、号機名、型式、台数、設置位置 | 機器台帳、見積 |
| 範囲 | 点検区分、対象、除外、支給品、追加条件 | 採用見積、打合せ記録 |
| 日程 | 実施日、作業可能時間、停止時間、予備日 | 顧客との合意 |
| 現場条件 | 入構、駐車、搬入、担当部署、事前提出物 | 工場案内、過去履歴 |
| 成果物 | 報告書様式、提出先、提出方法、希望時期 | 顧客指定、契約条件 |
顧客・工場・機器の基礎構造は顧客管理と機器台帳の作り方で解説しています。引継ぎ票へ重複入力しすぎないようにします。
未確定事項を空欄のまま渡さない
不明な項目があること自体より、誰も不明と認識していないことが問題です。未確定事項一覧に、確認内容、確認先、担当者、回答期限、作業への影響を記録します。
| 未確定事項 | 担当 | 期限 | 影響 |
|---|---|---|---|
| 対象号機2台の製造番号 | 営業 | 現地下見前 | 資料と部品確認 |
| 入構者名簿の様式 | 事務 | 実施7日前 | 入構申請 |
| 報告書の顧客指定様式 | 営業 | 実施前 | 現場記録項目 |
| 工場停止の確定時刻 | 顧客窓口 | 工程確定前 | 要員計画 |
期限を「できるだけ早く」にせず、現場準備のどの判断までに必要かを基準にします。技術的な判断が必要な事項は営業が推測で埋めず、現場責任者へ明示します。
現場へ渡す機器と、作業後に戻る記録をつなぐ
作業記録一覧には、作業名、作業日、作業タイプ、機器、担当者、総合判定、所見、結果サマリ、更新日が並びます。受注引継ぎ時に機器IDと号機名をそろえておけば、作業後の記録を対象機器へ戻しやすくなります。

引継ぎ会は資料読み上げではなく差分確認に使う
案件資料を事前共有し、会議では通常案件と違う条件、未確定事項、顧客への約束、過去作業からの注意情報を確認します。現場責任者が質問できる時間を取り、その場で担当と期限を更新します。
- 営業が受注範囲と顧客の目的を説明
- 現場責任者が対象機器と条件を確認
- 事務が入構・提出書類・連絡先を確認
- 未確定事項ごとに担当と期限を決定
- 現場責任者が受領確認を記録
受領確認は、現場がすべての技術条件を了承したという意味ではありません。情報を受け取り、追加確認事項を明らかにした記録です。
運用例:5台点検のうち1台だけ条件が違う
運用例として、同じ工場の天井クレーン5台の点検を受注し、1台だけ別棟にあり入構経路と作業可能時間が違う案件を考えます。営業は見積の対象台数だけでなく、機器IDごとの建屋、号機名、時間条件を一覧にします。別棟の1台には「午後のみ、別窓口へ到着連絡」と明記します。
現場責任者は要員と移動順を検討し、別棟の入構手続きが未確認だと分かれば事務へ期限付きで返します。この時点で、当日になって対象機器が見つからない、受付窓口が違うといった手戻りを減らせます。
引継ぎ後の変更は差分として再通知する
日程、台数、作業範囲、報告書様式が変わった場合、引継ぎ票を静かに上書きしません。変更前、変更後、依頼者、確認者、日時、影響を残し、関係者へ再通知します。追加作業が発生する場合は追加作業の変更内容と了承記録へつなぎます。
変更通知を受けた現場責任者は、要員、機材、提出書類への影響を確認します。営業は顧客へ伝えた内容と社内計画が一致しているかを再確認します。
作業完了後に営業へ戻す情報も決めておく
引継ぎは一方向ではありません。作業後は、実施日、実施機器、報告書の提出予定、追加提案候補、顧客からの依頼事項を営業と事務へ戻します。報告書提出が終わるまで案件を閉じない運用にすれば、作業は済んだが書類が残っている状態を見つけられます。
- 予定と実績で対象台数に差がないか
- 見積範囲外の相談がなかったか
- 顧客へ回答が必要な宿題が残っていないか
- 次回点検や再訪の予定を台帳へ戻したか
- 提出書類の担当と期限が決まっているか
役割分担をRACIの考え方で一枚にする
案件ごとに、実行担当、最終確認者、相談先、共有先を決めます。たとえば入構書類は事務が作成、営業が顧客条件を確認、現場責任者へ共有します。全員を実行担当にすると、誰も完了を記録しません。
| 作業 | 実行 | 最終確認 | 共有先 |
|---|---|---|---|
| 対象機器一覧 | 営業 | 現場責任者 | 事務 |
| 入構申請 | 事務 | 営業 | 現場担当 |
| 要員・機材計画 | 現場責任者 | 工事責任者 | 営業 |
| 報告書提出 | 報告担当 | 案件責任者 | 顧客窓口 |
これは安全上の責任区分を定める表ではなく、情報の作成・確認・共有を漏らさない業務分担です。
実施前の準備完了判定を別に置く
受注引継ぎが完了しても、実施準備が完了したとは限りません。一定日前に、対象機器、日程、入構、要員、機材、顧客連絡、記録様式の準備状態を確認します。未確定があれば担当者と期限を更新します。
「引継ぎ済み」という一つのチェックだけで案件を放置しないため、営業完了、現場受領、準備確認の三時点を分けます。
顧客との最終確認内容も同じ案件に残す
実施前連絡では、訪問日時、人数、車両、到着時の連絡先、対象号機、顧客側立会者を確認します。営業が聞いた内容と現場の予定が違った場合は、どちらかを選んで上書きせず顧客へ確認します。確認日時と回答者を記録します。
完了後の振り返りを次の引継ぎ票へ反映する
作業後に「入構申請の締切が想定より早かった」「顧客指定の写真番号が必要だった」などが分かったら、工場情報や引継ぎひな形へ戻します。個別案件の反省メモだけにすると次回担当が同じ手戻りを繰り返します。
月に数件を抽出し、引継ぎ時点の未確定項目、当日の追加確認、提出遅れを確認します。多い項目を必須欄に追加し、使われない欄は削ることで、チェックリストを現場に合う量へ保ちます。
よくある質問
Q. 小さな点検案件でも引継ぎ票は必要ですか。
A. 項目を減らした簡易版を使えます。顧客、機器、範囲、日程、窓口、未確定事項は残します。
Q. 見積書を渡すだけでは足りませんか。
A. 見積に入構条件、連絡先、提出様式、未確定事項まで書かれているとは限りません。引継ぎ票で補います。
Q. 現場担当者が顧客と直接調整した内容はどこへ残しますか。
A. 案件の接点履歴へ記録し、日程や範囲が変わる場合は変更管理へ載せます。
Q. 未確定事項が残っていても引き継げますか。
A. 引き継げますが、項目、担当、期限、影響を明示します。空欄のまま渡さないことが条件です。
Q. 引継ぎ完了は誰が決めますか。
A. 現場責任者が受領確認し、未確定事項の担当が決まった時点など、自社の完了条件を定めます。
受注範囲を機器と作業記録へ渡す
クレカンでは営業・受注案件を顧客や機器と関連付け、作業後は機器ごとの作業記録を確認できます。引継ぎの準備完了は、採用見積版、対象機器、工場停止時間、入構条件、提出物を自社のチェックリストに照らして確認します。営業案件から作業履歴へつなぐ機能で、営業・事務・現場の誰がどの情報を入力するか確かめてください。
