クレーン点検項目一覧|月例点検・年次点検・定期自主検査の違い

クレーンの法定の点検は、月例点検(1か月以内ごとの定期自主検査)、年次点検(1年以内ごとの定期自主検査)、作業開始前の点検、暴風・地震の後の点検の4つです(クレーン等安全規則第34条〜第37条)。このページでは、月例点検と年次点検の点検項目を分けて一覧にしています。
クレーン点検の種類と法定頻度
クレーン等安全規則が定める点検は次の4種類です。「定期自主検査」は月例点検と年次点検をまとめた呼び方で、どちらも結果の記録と3年間の保存が必要です。
| 点検の種類 | 頻度 | 根拠 | 記録の保存 |
|---|---|---|---|
| 年次点検(定期自主検査) | 1年以内ごとに1回 | 第34条 | 3年間 |
| 月例点検(定期自主検査) | 1か月以内ごとに1回 | 第35条 | 3年間 |
| 作業開始前の点検 | その日の作業を始める前 | 第36条 | 義務なし |
| 暴風・地震の後の点検 | 屋外で瞬間風速30m/sを超える風の後、中震以上の地震の後 | 第37条 | 3年間 |
使用しない期間(年次は1年超、月例は1か月超)は定期自主検査を省けますが、使用を再開する際に自主検査を行う必要があります。記録と保存は第38条で定められています。
点検項目を適切に確認しないと、不具合の見落としによる重大事故、点検漏れによる法令違反、突発的な故障による生産停止などのリスクが高まります。
点検管理については、クレーン点検管理の方法も参考にしてください。
月例点検(月次の定期自主検査)の点検項目
第35条が月例点検で確認する事項として定めているのは、安全装置・警報装置・ブレーキ・クラッチの異常の有無、ワイヤロープ・つりチェーンの損傷の有無、フックなどつり具の損傷の有無、配線・集電装置・配電盤・開閉器・コントローラーの異常の有無です。以下はこれを部位ごとに分けた一覧です。
月例点検は、1ヶ月以内ごとに1回実施する点検であり、日常的な使用による劣化や不具合を早期に発見することを目的としています。
以下は月次点検で確認すべき主な点検項目です。
① クレーン本体の点検項目
- クレーン本体の変形・損傷・亀裂の有無
(ガーダー・ビーム・支柱の変形や亀裂を目視確認) - レールのずれ・変形・損傷の有無
(走行レールのずれ、曲がり、破損、緩みを確認) - ボルト・固定部の緩みの有無
(アンカーボルト、固定金具の緩みを確認) - クレーン本体の水平度の確認
(ガーダー・ビームが水平を保っているか確認)
② ワイヤーロープ・チェーンの点検項目
- ワイヤーロープ・チェーンの断線・損傷の有無
(全長を手でなぞりながら、断線、変形、摩耗を確認) - ワイヤーロープ・チェーンのねじれ・キンクの有無
(ねじれや折れ曲がりがないか確認) - ワイヤーロープ・チェーンのたるみの確認
(正常な張りが保たれているか確認) - ワイヤーロープ・チェーンの潤滑状態の確認
(潤滑不足がないか確認)
③ ブレーキ・制御装置の点検項目
- ブレーキの効き具合の確認
(実際に操作してブレーキの効き具合を確認) - 制御装置の正常動作確認
(各操作が正常に動作するか確認) - 異音・異常動作の有無
(動作時に異音や引っかかりがないか確認) - 制動距離の確認
(制動距離が正常範囲内か確認)
④ 電気系統の点検項目
- 電源・配線の断線・破損の有無
(ケーブルの被覆破れ、コネクタの緩み、焦げ跡がないか確認) - 操作盤・リモコンの正常動作確認
(各ボタン・スイッチの反応、表示ランプの点灯状況を確認) - リミットスイッチの正常動作確認
(リミットスイッチが正常に作動するか確認) - 過熱・焦げ臭の有無
(電気系統の過熱や焦げ臭がないか確認)
⑤ ホイスト・フックの点検項目
- ホイストの昇降動作の確認
(空荷で昇降させ、途中停止や異常音がないか確認) - フックの安全装置の動作確認
(安全ラッチの動作、スイベルの回転具合を確認) - フックの変形・損傷の有無
(フックの変形、摩耗、傷がないか確認) - フックの開口部の広がりの確認
(フックの開口部が広がっていないか確認)
特にワイヤーロープ・チェーンの断線・損傷、ブレーキの効き具合、電気系統の異常は、月次点検で重点的に確認すべき項目です。
例えば、ワイヤーロープの断線や損傷を見落とすと、荷物が落下して作業員が負傷する事故が発生する恐れがあります。
また、ブレーキの効き具合が低下している場合、制動距離が伸び、衝突事故や落下事故につながるリスクが高まります。
さらに、電気系統の異常を放置すると、火災や突発停止が発生するリスクが高まります。
これらの点検項目は、月次点検で定期的に確認することで、不具合を早期に発見し、重大事故を防止できます。
年次点検(年次の定期自主検査)の点検項目
第34条は、年次点検で荷重試験を行うことを定めています(定格荷重に相当する荷を吊り、つり上げ・走行・横行などを定格速度で作動させる)。点検項目そのものは条文に列挙されていないため、月例点検の項目に構造部分などを加えて行うのが一般的です。
年次点検は、1年以内ごとに1回実施する点検であり、月次点検よりも詳細な点検を実施し、構造的な劣化や不具合を確認することを目的としています。
以下は年次点検で確認すべき主な点検項目です。
① 月次点検項目の詳細確認
- 月次点検で確認する項目をより詳細に確認する
(月次点検項目を詳細に確認し、劣化の進行状況を把握) - 測定器を使用した精密な測定
(摩耗量、変形量などを測定器で測定) - 劣化傾向の分析
(前回点検との比較により、劣化傾向を分析)
② 構造部の詳細点検
- ガーダー・ビーム・支柱の詳細な変形・損傷確認
(打音検査、超音波探傷検査などで詳細に確認) - 溶接部の詳細な点検
(溶接部の割れ、剥がれを詳細に確認) - レールの詳細な点検
(レールの摩耗量、段差、偏摩耗を詳細に確認) - アンカーボルト・固定部の詳細な点検
(ボルトの緩み、変形、腐食を詳細に確認)
③ ワイヤーロープ・チェーンの詳細点検
- ワイヤーロープ・チェーンの摩耗量の測定
(摩耗量を測定し、許容値を超えていないか確認) - ワイヤーロープ・チェーンの安全率の確認
(安全率が法令で定められた基準を満たしているか確認) - ワイヤーロープ・チェーンの全長の確認
(全長を確認し、伸びや変形がないか確認) - ワイヤーロープ・チェーンの交換時期の判断
(交換が必要かどうかを判断)
④ ブレーキ・制御装置の詳細点検
- ブレーキライニングの摩耗量の測定
(ブレーキライニングの摩耗量を測定し、交換が必要か判断) - 制御装置の詳細な動作確認
(各操作を詳細に確認し、異常がないか確認) - ブレーキ・制御装置の調整
(必要に応じてブレーキや制御装置を調整) - ブレーキ・制御装置の交換時期の判断
(交換が必要かどうかを判断)
⑤ 電気系統の詳細点検
- 電気系統の絶縁抵抗測定
(絶縁抵抗を測定し、基準値を満たしているか確認) - 電気系統の接続部の詳細確認
(接続部の緩み、腐食、過熱を詳細に確認) - 制御盤の内部点検
(制御盤の内部を点検し、異常がないか確認) - 電気系統の交換時期の判断
(交換が必要かどうかを判断)
⑥ 荷重試験の実施
- 定格荷重での荷重試験
(定格荷重で荷重試験を実施し、正常に動作するか確認) - 過負荷防止装置の動作確認
(過負荷防止装置が正常に作動するか確認) - リミットスイッチの動作確認
(リミットスイッチが正常に作動するか確認) - 緊急停止装置の動作確認
(緊急停止装置が正常に作動するか確認)
特に
構造部の詳細点検、ワイヤーロープ・チェーンの安全率の確認、荷重試験の実施
は、年次点検で重点的に実施すべき項目です。
なお、性能検査は年次点検とは別のものです。つり上げ荷重3トン以上のクレーンが検査証(有効期間2年)を更新するために受ける検査で、荷重試験を含みます(第10条・第40条)。
例えば、構造部の詳細点検を怠ると、構造的な劣化や不具合を見落とし、重大事故につながるリスクが高まります。
また、ワイヤーロープ・チェーンの安全率が基準を下回っている場合、法令違反となるだけでなく、破断事故につながるリスクが高まります。
さらに、荷重試験を省くと、定格荷重を吊ったときのブレーキや安全装置の不具合を見落とし、重大事故につながるリスクが高まります。
これらの点検項目は、年次点検で詳細に確認することで、構造的な劣化や不具合を早期に発見し、重大事故を防止できます。
⑦ 年次点検の具体的な点検項目サンプル
以下は、年次検査報告書に記載される具体的な点検項目のサンプルです。実際の点検では、これらの項目を漏れなく確認することが重要です。
巻上部
- ブレーキ:ライニング摩耗、スリップ、ソレノイド・シュー・ピン摩耗作動
- リミットスイッチ:リミットレバー・ギャップ作動、接点摩耗
- フレーム:亀裂・変形
- ワイヤロープ(チェン):摩耗、素線切断、ロープエンド・エコライザー異常
- ロードブロック:フック外れ止め金具変形、シーブ・ピン摩耗破損、フック摩耗・疵
横行部
- トロリー:ホイル・ガイドローラー摩耗、横行電動・減速機異常
- ブレーキ:ライニング摩耗、ソレノイド・シュー・ピン摩耗作動
- 横行レール:レール曲り・異常、ストッパー取付状況
走行部
- 走行レール:走行範囲障害物、レール曲り・異常、レール端ストッパー・ボルト緩み、レール取付ボルト緩み
- ガータ・サドル:取付ボルト緩み、ガイドローラー摩耗、ホイールギャ歯面・車軸給油状況、走行車軸踏面・フランヂ摩耗外傷、車輪軸キープレート変形・緩み、サドルのバッファ固定
- 走行機械装置:走行電動減速機異常、チェン・ギャー・カップリング軸受摩耗、ライニング摩耗、ソレノイド・シュー・ピン摩耗作動
走行電気部
- 集電装置ほか:クッションスターター作動、コレクター・トロリー線摩耗・変形、キャブタイヤー・キャリアー破損・老化、制御盤・電気機器緩み、リミットスイッチ・レバー作動確認
- 給油:巻上部・走行部給油状況
その他
- 絶縁抵抗:絶縁抵抗(MΩ)
- 押釦スイッチ:接点摩耗、配線締付ネジゆるみ、ケース・絶縁板損傷、キャプタイヤー老化・変形
- マグネットスイッチ:接点摩耗、配線締付ネジゆるみ、作動確認
これらの点検項目は、年次検査報告書に記載される標準的な項目であり、実際の点検ではこれらの項目を漏れなく確認することが重要です。
例えば、巻上部のブレーキやワイヤロープの点検を怠ると、荷物が落下して作業員が負傷する事故が発生する恐れがあります。
また、走行部のレールやガータ・サドルの点検を怠ると、クレーンの走行時に脱線や転倒事故が発生するリスクが高まります。
さらに、走行電気部の集電装置や制御盤の点検を怠ると、電気系統の故障や火災が発生するリスクが高まります。
これらの点検項目を、年次点検で詳細に確認することで、不具合を早期に発見し、重大事故を防止できます。
月例点検・年次点検・定期自主検査の違い
よく混同される3つの言葉を整理します。定期自主検査は月例点検と年次点検の総称で、別の点検が3つあるわけではありません。
① 月例点検(月次)の特徴
- 実施頻度:1ヶ月以内ごとに1回
- 点検内容:日常的な使用による劣化や不具合を確認
(目視確認、動作確認が中心) - 点検項目:基本的な点検項目を確認
(ワイヤーロープ・チェーン、ブレーキ、電気系統、ホイスト・フックなど) - 目的:不具合の早期発見と重大事故の防止
② 年次点検の特徴
- 実施頻度:1年以内ごとに1回
- 点検内容:月次点検よりも詳細な点検を実施
(測定器を使用した精密な測定、詳細な点検) - 点検項目:月次点検項目に加えて、構造部の詳細点検、性能検査を実施
(構造部の詳細点検、ワイヤーロープ・チェーンの安全率確認、性能検査など) - 目的:構造的な劣化や不具合の確認と法令遵守の確保
③ 定期自主検査とは
- 実施頻度:法令で定められた頻度(月次・年次)
- 点検内容:事業者が自主的に実施する点検
(法令で定められた点検項目を確認) - 点検項目:月次点検と年次点検の点検項目
(法令で定められた点検項目を確認) - 目的:法令遵守の確保と安全確保
特に月次点検と年次点検の違いは、点検の詳細度と点検項目の範囲です。
例えば、月次点検は目視確認や動作確認が中心であるのに対し、年次点検は測定器を使用した精密な測定や詳細な点検を実施します。
また、月次点検は基本的な点検項目を確認するのに対し、年次点検は構造部の詳細点検や性能検査も実施します。
さらに、自主点検は、月次点検と年次点検の両方を指し、事業者が自主的に実施する点検を意味します。
これらの違いを理解し、適切な頻度で適切な点検項目を確認することで、不具合を早期に発見し、重大事故を防止できます。
まとめ:適切な点検項目の確認で安全と法令遵守を両立する
クレーンの点検項目は、月次点検と年次点検で異なり、それぞれ適切な点検項目を確認することが安全確保と法令遵守の観点から重要です。
点検項目を適切に確認しないと、不具合の見落としによる重大事故や、点検漏れによる法令違反が発生するリスクがあります。
「点検項目がわからない」「月次点検と年次点検の違いがわからない」「点検管理の方法がわからない」という場合は、クレーン保守点検業者への相談・無料見積もり依頼から始め、適切な点検項目の確認と安全確保を実現してください。
