クレーン年次点検の年間予定を組む方法|繁忙月の偏りを見える化

年次点検の期限を一覧にしても、同じ月に大型工場が重なれば人員や報告書作成が追いつきません。予定表では台数だけでなく、現場作業、移動、準備、報告書、再訪の見込みを月別の必要人工へ置き換えると、繁忙の山を早めに見つけられます。
この記事は点検期限の決め方ではなく、期限を守れる範囲で年間の仕事量を配分する点検会社側の計画に絞ります。実施期限や法的区分は個別に確認してください。
期限表と負荷表は役割が違う
期限表は「いつまでに何を確認・実施するか」を管理し、負荷表は「その仕事を処理できる人と時間があるか」を見ます。期限の考え方はクレーン点検の期限管理で解説しています。年間計画では確定した期限、契約条件、顧客の停止可能日を入力として使います。営業判断だけで期限を動かしてはいけません。
台数ではなく作業単位へ分解する
| 負荷項目 | 見積もる単位 | 見落としやすい条件 |
|---|---|---|
| 現場点検 | 人数×時間 | 高所、台数間の移動、立会い待ち |
| 移動 | 車両・班×時間 | 遠方、渋滞、同日別工場 |
| 事前準備 | 案件×時間 | 入構書類、点検表、機材の準備 |
| 報告書 | 台数または様式×時間 | 顧客指定様式、写真整理、承認 |
| 見積・再訪 | 発生率×時間 | 指摘後の見積、確認作業 |
同じ10台でも、一棟に並ぶ10台と、三工場に分かれた10台では負荷が違います。過去案件の実績時間があれば、似た条件ごとの標準工数を作り、実績との差を毎年見直します。

計算例:月別の必要人工を出す
次は計画方法を示す架空の計算例です。4月にA工場2日×2人、B工場1日×3人、C工場1日×2人の現場作業があり、準備と報告書に合計5人工が必要とします。現場は4+3+2で9人工、合計14人工です。班の4月の実働可能日が一人あたり15日、担当2人なら30人工の枠がありますが、修理対応や月次点検に20人工を確保すると残りは10人工で、4人工不足します。
| 月 | 年次点検 | 他の確保枠 | 実働可能 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 14人工 | 20人工 | 30人工 | 4人工不足 |
| 5月 | 8人工 | 18人工 | 30人工 | 4人工余力 |
| 6月 | 11人工 | 18人工 | 28人工 | 1人工不足 |
不足が見えた段階で、期限、契約、顧客都合を確認し、相談を早めます。単に翌月へ移すのではなく、候補日と必要条件を顧客と合意します。具体的な調整は点検の日程調整手順で扱います。
年間予定を組む7段階
- 機器ごとの期限と契約対象を確認する
- 顧客の停止月、曜日、繁忙期を集める
- 過去実績から案件ごとの仮工数を置く
- 月別に現場、準備、報告、移動を集計する
- 有給、研修、緊急修理の予備枠を差し引く
- 過負荷の月から、調整可能な案件を洗い出す
- 顧客と日程を確定し、確定度を更新する
最初から日付まで確定させず、「期限確認済み」「月仮置き」「候補日提示」「顧客合意」「社内確定」の段階を持たせます。仮置きと確定を同じ色で表示すると、予定が埋まっているのに未合意という状態を見逃します。
繁忙の山を崩す判断順
まず同一顧客・同一工場でまとめられる作業を探します。次に、顧客の停止日が複数ある案件や、早めに実施できる案件について、期限と契約を確認したうえで候補を相談します。班の応援や外部協力が必要な場合は、担当範囲、報告書確認、顧客への説明を先に決めます。
延期で空いた枠を放置すると、別月に負荷が移るだけです。変更理由、仮の再調整月、次の連絡日を記録する方法は点検日程の延期・変更管理を参照してください。
月次と週次で見る指標
- 期限月別の対象台数と案件数
- 月別の必要人工と確定済み人工
- 候補日未提示・顧客回答待ちの人工
- 報告書未完了の持越し人工
- 緊急修理に残す予備枠
- 一人または一班に偏った専門作業
台数だけをKPIにせず、未確定の大きな案件と、報告書の持越しを別に見ます。現場が終わっても提出物が積み残るなら、その月の仕事は完了していません。
確定・見込み・予備の三層で月を読む
月別表は確定案件だけでは遅く、すべての候補を確定扱いすると過大になります。顧客合意済みを「確定」、対象月は分かるが日付未定を「見込み」、修理や再訪へ備える枠を「予備」として別々に積みます。経営側は合計負荷を見ながら、現場には確定分を明確に伝えられます。
| 層 | 算入例 | 更新の契機 |
|---|---|---|
| 確定 | 合意済み工数の100% | 日程変更・範囲変更 |
| 見込み | 標準工数×受注・実施見込み | 候補提示・顧客回答 |
| 予備 | 過去実績から置く社内枠 | 緊急案件発生・月末見直し |
見込みの掛け率は売上予測ではなく、班の余力を見る仮定です。実績との差を残し、自社に合う値へ調整します。見込みを確定予定として顧客へ伝えないよう表示を分けます。
後工程と利用可能時間まで年間計画へ入れる
点検日が月末に集中すると、翌月の報告書作成が詰まります。年間表には現場日だけでなく、報告書作成、社内確認、顧客提出、指摘見積の予定工数を翌週へ配置します。顧客指定様式がある案件は標準より時間がかかるため、過去実績を別区分にします。
毎月の振り返りでは、予定人工と実績人工、遅れの理由、翌月へ持ち越した仕事を確認します。標準工数との差が大きい案件は、単に担当者の速度差とせず、移動、待機、台数、帳票、追加依頼など条件を分解します。
受注前に営業が確認する余力
- 希望月の確定・見込み工数
- 必要な技能・経験を持つ班の空き
- 遠方移動と宿泊を含む拘束時間
- 報告書提出までの後工程
- 日程変更時に使える代替候補
稼働日数を月ごとに現実的に置く
各月の能力を「人数×営業日」で固定すると、祝日、有給、研修、車両点検、棚卸しなどを見落とします。班ごとに実際に現場へ出られる日を置き、半日作業や移動日も過大評価しないようにします。
遠方案件が連続する月は、宿泊・移動と報告書の時間を別に見ます。経験者一人にしかできない確認がある場合は、会社全体の人工が余っていてもその班は過負荷です。総人工と技能別の余力を並べて確認します。
計画表の更新日と更新担当を明記し、古い月別表を会議で使わないようにします。変更理由も残すと、翌年の仮工数を直す材料になります。実績確定後は仮値と置き換えます。
よくある質問
Q. 年間予定はいつ作り始めますか。
A. 契約更新や顧客の停止計画を確認できる時期に仮置きを始め、確定情報が入るたびに更新します。全顧客を同日に確定させる必要はありません。
Q. 工数実績がない場合はどうしますか。
A. 過去の報告書件数、訪問人数、出発・帰社記録から仮値を置き、案件完了後に実績との差を残します。
Q. 点検台数が少ない月なら余裕と判断できますか。
A. 遠方、指定様式、大型案件などで工数が増えるため、台数と人工の両方を見ます。
Q. 緊急修理の予備枠はどれくらい必要ですか。
A. 一律の割合ではなく、自社の過去実績と対応方針から決めます。使わなかった枠の扱いも月内で決めます。
Q. 顧客へ早い時期を提案してよいですか。
A. 個別の期限、契約、操業計画を確認し、候補として相談します。営業都合だけで実施時期を確定しません。
点検対象を月別工数へ移せるか試す
無料体験では、自社に近い台数と点検種別を登録し、年次点検の対象を月別工数表へ漏れなく移せるかを試してください。期限情報の一覧は対象抽出の入口として使い、必要人工、移動、調整、報告書作成の時間は担当者が見積もります。
周期未設定の機器を残した場合の社内確認手順も決めます。画面内の周期や日付はデモ表示であり、法定周期の根拠には使わず、自社の対象設備と現行の要求事項を確認したうえで計画へ反映してください。
