天井クレーンの無線化(ラジコン化)費用と注意点

天井クレーンの無線化(押ボタンのペンダントスイッチを無線リモコンに替える改造)の費用は、送信機・受信機の機器代に、制御盤の改造、非常停止まわりの配線、試運転と調整を加えた額で決まります。既存の制御盤がそのまま使えるか、部品の交換が要るかで工事の量が変わるため、定価のようなものはなく、現地確認のうえでの見積りになるのが一般的です。
もう一つ注意したいのが運転の資格です。つり上げ荷重5トン以上のクレーンでは、運転の仕方によって、床上操作式クレーン運転技能講習ではなく免許が必要になる場合があります。この記事では、費用を左右する要素、見積書の確認項目、資格と運用の注意点を解説します。
無線化で変わること
無線化は、操作する人がクレーンから垂れ下がったスイッチを持って荷と一緒に歩く運転から、離れた位置で荷の全体を見ながら操作できる運転に変える改造です。メリットだけでなく、新しく管理が必要になることもあります。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| よくなること | 荷や周りの人を離れた位置から見渡せる/ペンダントのケーブルが荷や設備に引っ掛からない/ケーブルの断線・押ボタンの故障が減る |
| 新しく管理が要ること | 送信機の電池と保管/電波の混信への対策/送信機の置き忘れや持ち出しの防止/運転者の資格の確認 |
| 残しておくとよいもの | 電波が使えないときの予備の操作手段(有線のスイッチを残すかを業者と相談) |
インバータ制御とあわせて改造すると、荷の揺れを抑えた運転がしやすくなります。インバータ化の費用の考え方はクレーンのインバータ化で解説しています。
費用を左右する要素
無線化の見積りは、次の要素で金額が変わります。
| 要素 | 費用が上がりやすい条件 | 事前に確認すること |
|---|---|---|
| 制御盤の状態 | 古く、部品の交換や盤の改造が必要 | 制御盤の年式と、メーカーの部品供給の状況 |
| 動作の数 | 巻上・横行・走行に加え、補巻や速度の段数が多い | 今のペンダントのボタンの数と機能 |
| インバータの有無 | 無線化と同時にインバータ化する | 速度の制御をどうしたいか |
| 台数と送信機の数 | 複数台を1つの送信機で切り替える、送信機を複数持つ | 同じ建屋に何台のクレーンがあるか |
| 安全の機能 | 非常停止の回路の改造、警報や表示灯の追加 | 非常停止をどう働かせるか |
| 電波の環境 | 他の無線機器が多い、建屋の構造で電波が届きにくい | 同じ建屋の無線設備・計測機器 |
| 作業条件 | 稼働中で夜間・休日の工事、高所作業車が必要 | 工事できる日時、床からの高さ |
同じ型式のクレーンでも、制御盤の状態で工事の量が大きく変わります。見積りの前に、制御盤の扉の内側と銘板の写真を業者に送ると、現地確認がスムーズです。
見積書で確認する項目
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 機器 | 送信機・受信機のメーカーと型式、送信機の数、予備の電池や充電器 |
| 制御盤の改造 | 改造の範囲、交換する部品の明細 |
| 非常停止 | 送信機の非常停止がどの回路を切るか、電波が途切れたときの停止の動作 |
| 予備の操作手段 | 有線のスイッチを残すか、撤去するか |
| 試運転と調整 | 全ての動作の確認と、荷を吊っての確認が含まれるか |
| 取扱いの説明 | 運転する人への説明、取扱説明書の有無 |
| 保証 | 機器と工事の保証期間、故障時の代替の送信機 |
無線化は制御の改造なので、工事のあとに作業開始前の点検でコントローラーの機能を確かめる必要があります(クレーン等安全規則第36条)。点検表の項目を無線用に直す作業も、見積りに含めてもらうと漏れません。
5トン以上で注意したい運転の資格
クレーンの運転の資格は、つり上げ荷重と運転の方式で決まります。
| つり上げ荷重 | 必要な資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 5トン未満 | 特別の教育 | クレーン等安全規則第21条 |
| 5トン以上 | クレーン・デリック運転士免許。ただし床上操作式クレーンは床上操作式クレーン運転技能講習の修了者も運転できる | 同規則第22条、労働安全衛生法施行令第20条第6号 |
ここでいう床上操作式クレーンは、「床上で運転し、かつ、運転する者が荷の移動とともに移動する方式」と定められています(同規則第22条)。無線化して荷から離れた位置で操作する運転は、この定義に当たらない場合があります。また、免許を取り扱える機械の種類を限定する「床上運転式クレーン」は、「床上で運転し、かつ、運転する者がクレーンの走行とともに移動する方式」と定められています(同規則第223条第3号、第224条の4)。
つり上げ荷重5トン以上のクレーンを無線化するときは、改造の前に、実際の運転の仕方で必要になる資格を所轄の労働基準監督署に確認し、運転する人の資格を確かめてください。資格が足りないことに後から気づくと、改造したのに運転できる人がいないという事態になります。
工事の流れ
- 現地確認(制御盤、ペンダントの機能、電波の環境、運転の仕方)
- 仕様の決定と見積り(送信機の数、非常停止、予備の操作手段)
- 運転者の資格の確認(5トン以上の場合)
- 機器の手配
- 制御盤の改造と受信機の取り付け
- 全ての動作と非常停止の確認、荷を吊っての試運転
- 運転する人への説明、点検表の見直し
工事中はクレーンを止める必要があります。止められる日時を最初に伝えると、機器の手配を含めた日程を組んでもらえます。
無線化したあとの運用の注意
- 送信機の管理:作業が終わったら電源を切り、決めた場所に保管します。置き忘れや、誰でも持ち出せる状態は誤操作のもとです。
- 複数台の混信:同じ建屋で複数のクレーンを無線化する場合は、どの送信機がどのクレーンを動かすかを表示し、取り違えを防ぎます。
- 電池:電池切れで操作が途切れないよう、予備の電池や充電の担当を決めます。
- 作業開始前の点検:非常停止を含めた送信機の機能を、毎日の点検で確かめます(クレーン等安全規則第36条)。
- 月次・年次の点検:コントローラーの異常の有無は月次の定期自主検査の項目です(同規則第35条)。点検業者に無線の機器も見てもらえるか確認します。
よくある質問
Q. 今のペンダントスイッチは撤去したほうがよいですか?
A. 電波が使えないときに備えて有線のスイッチを残す方法と、誤操作を避けるために撤去する方法があります。どちらにするかで制御盤の改造の内容が変わるので、見積りの段階で業者と決めてください。
Q. 古いクレーンでも無線化できますか?
A. 多くの場合は可能ですが、制御盤の部品が古いと改造の範囲が広がります。制御盤の更新や、クレーンそのものの更新と比べたほうがよい場合もあります。更新の費用は天井クレーン更新の費用をご覧ください。
Q. 無線化すると届出は必要ですか?
A. クレーン等安全規則第44条の変更届の対象は、構造部分、原動機、ブレーキ、つり上げ機構、ワイヤロープ・つりチェーン、つり具の変更です。操作の方式だけを替える工事がこれに当たるかは工事の内容によるため、3トン以上のクレーンでは業者と所轄の労働基準監督署に確認してください。
関連記事
- クレーンのインバータ化|メリットとデメリット、費用の考え方
- 天井クレーンの修理費用の相場|部位別の目安と見積りの内訳
- 天井クレーンの設置費用|トン数別の価格と総額の考え方
- 天井クレーン工事の種類と費用|更新・増設・撤去まで解説
出典・参考
- クレーン等安全規則(e-Gov法令検索):第21条(特別の教育)、第22条(就業制限)、第35条(月次の定期自主検査)、第36条(作業開始前の点検)、第44条(変更届)、第223条(クレーン・デリック運転士免許)、第224条の4(限定免許)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索):第20条第6号(就業制限に係る業務)
