クレーンの種類と点検|クレーンの種類別に点検ポイントや費用相場を解説
クレーンの種類と点検|クレーンの種類別に点検ポイントや費用相場を解説
「クレーン点検って何をすればいい?」「天井クレーンと橋形クレーンで違いはある?」
とお悩みのご担当者様へ。
クレーンは労働安全衛生法・クレーン等安全規則で定期点検が義務化されています。未実施は法令違反リスクだけでなく、重大事故・生産停止・高額な緊急修理につながるため、計画的な点検が欠かせません。
この記事では、クレーン点検の共通ルール、クレーンの種類別の違い、費用目安等を整理し、見積り依頼のポイントもまとめました。
この記事で分かること
- クレーン点検の法的義務・頻度・記録保存の基本ルール
- 天井クレーンと橋形クレーンで重視すべき点検項目の違い
- 各種クレーンの種類と用途のポイント
- 点検費用の目安と内訳、業者見積りの比較ポイント
- 点検未実施が招くリスクと事故回避の対策例
1. クレーン点検の共通ルール
労働安全衛生法・クレーン等安全規則に基づき、月次・年次の自主点検と記録保存が義務です。未実施や記録不備は、監督署の指導・是正命令や重大事故時の責任増大につながります。
- 頻度: 使用月ごとの月次点検、1年以内ごとの年次点検。
- 実施者: 有資格者・熟練者が担当。社内日常点検+専門業者による定期点検のハイブリッドが現実的。
- 記録保存: 3年間(実務上は5年推奨)。写真付きで残し、是正結果と紐付け。
- 異常時の措置: 重大欠陥があれば直ちに使用停止し、補修後に再開。
ポイントは「記録→比較→是正」のサイクルを回すこと。去年の年次点検結果と今年を比較し、摩耗進行度や再発有無を確認しましょう。
2. クレーンの種類一覧
工場で用いられる主なクレーンを用途・設置環境別に整理します。
天井クレーン(オーバーヘッドクレーン)
建屋内の梁上にレールを敷設し、ガーダー上をトロリーが走行する最も一般的なタイプ。屋内用途が多く、荷物は建屋内で水平移動・昇降させる。
橋形クレーン(門形・半門形を含む)
左右にレールを敷き、門形構造のガーダーがまたいで走行するタイプ。屋外ヤードや重量物搬送で多用。半門形は片側が高架、片側が地上軌条で省スペースに設置できる。
ジブクレーン(柱据置・壁掛け)
柱を中心にアーム(ジブ)が回転し、先端にホイストを吊る小〜中能力向け。セル生産ラインや工作機周りの限定エリアで活躍。壁掛け型は壁面に取り付け、省スペース。
モノレールクレーン/サスペンション式
単レール上をトロリーが走行するシンプル構造。ラインに沿った一方向搬送に適し、天井空間を有効活用。曲線レールや分岐を設ける構成もある。
ポータブル門型(簡易ガントリー)
小型・組立式の門型で、移動や仮設に向く。軽量物の荷役や設備据付時の補助として用いられる。
スタッカークレーン(自動倉庫向け)
ラック間を自動走行し、パレットを入出庫する専用機。一般の荷役クレーンとは運用が異なるが、点検義務は同様に発生する。
3. 点検項目の代表例(共通)
「吊る・走る・止まる・守る」の4視点で抜けなく確認します。
月次点検
- フック・フックブロックの摩耗・変形・亀裂(開口の広がり)。
- ワイヤロープ/チェーンの素線切れ・錆・キンク・給脂状態。
- 巻上げ・横行・走行ブレーキの制動距離、異音、片効き。
- リミットスイッチ(上限・下限・横行・走行)の確実動作。
- 押ボタンスイッチ・配線の損傷、端子緩み、戻りの渋さ。
- 給電部(トロリー線・ケーブルリール)の摩耗、シュー削れ、バネ張力。
年次点検
- 荷重試験(定格荷重での作動・制動確認、必要に応じ過荷重試験)。
- 走行レール・車輪:摩耗・がた・偏摩耗、継ぎ目段差、締結状態。
- 減速機・軸受:異音・振動・油漏れ・油質(金属粉混入)。
- 構造部材:亀裂・塗装剥離・腐食。ガーダー溶接部、端部の錆。
- 制御盤・配電盤:絶縁抵抗、端子の緩み、温度上昇、結露・塵埃。
- 安全装置:非常停止、警報、過巻防止装置、ショックリレーなどの遅れ確認。
- 走行直角度・偏芯:蛇行や偏芯による車輪摩耗の兆候。
年次点検は「総合健診」。荷重試験に加え、振動・油分析で劣化傾向を可視化すると予防保全計画が立てやすくなります。
4. クレーンの種類別の点検
機種ごとに劣化しやすい部位・注意点があります。共通点検に加えて、以下を特に確認します。
天井クレーン(屋内)
屋内で広範囲を横行するため、レールや巻上げ装置の摩耗・安全装置の確実作動が安全運用の要となるのが特徴です。
- レール・継ぎ目: 段差・緩み・摩耗。蛇行や偏摩耗の兆候。
- 上限リミット: 巻上げ上限の確実作動、過巻防止装置の遅れ有無。
- 電装・押ボタン: 接点不良・戻り不良・ケーブル被覆損傷。
- 油漏れ・温度: 減速機・軸受の漏れと温度上昇をセットで確認。
- 荷重試験: 制動距離と揺れを確認し、ブレーキ片効きをチェック。
橋形/門形クレーン(屋外)
屋外設置が多く風雨や環境の影響を受けやすいため、腐食と絶縁・風対策がトラブル予防に重要です。
- 腐食・塗装: ボルト・端部・フランジの錆。塗膜剥離は早期補修を計画。
- 走行路・車輪: 偏摩耗、フラットスポット、継ぎ目ギャップと締結。
- 絶縁・結露: 盤内結露・端子緩み・露出配線の劣化。絶縁抵抗測定。
- 風荷重: 走行ロック・ブレーキ保持力。風の強い立地では入念に確認。
- 給電: キャブタイヤ/トロリー線の摩耗、吊り金具、バネ張力。
ジブクレーン(柱据置・壁掛け)
狭い範囲での旋回動作が中心なので、基礎・旋回部・取付状態の変化やたわみに特有の注意が必要です。
- 旋回部: ギヤ摩耗・ガタ・旋回制動。グリス切れに注意。
- 基礎・取付: アンカー緩み・割れ。壁掛け型は取付ベースの亀裂。
- 旋回リミット: 機械ストッパーの摩耗・緩み。
- ジブたわみ: 定格荷重時のたわみ量が基準内か。
モノレールクレーン/サスペンション式
単レール構造・カーブ走行の多さから、レールの直線性や分岐部の摩耗・取付部の緩み等に特に注意します。
- レール直線性・継ぎ目: 下がり・ねじれ・段差。サドル金具の緩み。
- カーブ・分岐: トロリーの引っ掛かり、偏摩耗。
- 吊りボルト・ハンガー: 緩み・亀裂・腐食。
ポータブル門型(簡易ガントリー)
移動・組立て式のため、組立部やキャスターの状態、設置時の水平・垂直精度が安全確保の肝です。
- キャスター: 削れ・ガタ・ブレーキ不良。
- 組立部: ピン・ボルトの抜けや緩み。分解輸送後は増し締め必須。
- 水平・垂直: ガーダー水平、脚の垂直。傾きは走行・巻上げに影響。
スタッカークレーン(自動倉庫)
自動化と高速運転が特徴のため、レール精度や制御・センサ系統の異常検知が信頼性維持に重要です。
- ガイドレール・車輪: ガタ・偏摩耗・段差。走行直角度。
- リフター・フォーク: 変形・摩耗・センサー位置ズレ。
- 制御・安全: 位置検出、エリアセンサ、非常停止の遅れ有無。
- ケーブル: ケーブルキャリアの摩耗・捩じれ、接触不良。
5. クレーン種類別の点検費用
費用は仕様・台数・環境・拠点距離で変動します。以下は目安レンジです(条件で大きく上下します)。
- 天井クレーン: 月次3〜8万円/台、年次15〜40万円/台。長大スパン・防爆・高所作業で増額。
- 橋形・門形クレーン: 月次5〜10万円/台、年次20〜60万円/台。屋外は風対策や高所作業車が上乗せ要因。
- ジブクレーン/モノレール: 月次2〜6万円/基、年次10〜30万円/基。カーブや分岐が多いと点検時間が増えがち。
- スタッカークレーン(自動倉庫): 月次6〜12万円/台、年次30〜80万円/台。制御・安全装置の試験が加算要因。
費用を押し上げる主な要素
- 高所作業車・クレーン車、夜間・休日対応の割増。
- 荷重試験ウェイトのレンタル・運搬・養生、搬入経路の確保。
- 特殊環境(粉塵・高温・防爆・屋外塩害)や停止時間の厳しい現場。
- 報告書の写真点数や指摘粒度、是正提案の詳細度。
見積り依頼時に揃えると比較しやすい情報
- 台数・能力・スパン・設置環境(屋内/屋外)・使用頻度。
- 荷重試験の要否とウェイト手配者、搬入経路・保管場所。
- 報告書の提出期限、写真点数、指摘と是正提案の粒度。
- 追加作業の承認フロー(誰が・いくらまで・どう承認)、上限額。
「一式」だけの見積りは後日の追加請求リスクがあるため、明細化と追加発生条件(誰が・いくらまで承認するか)を事前に合意しておきましょう。
6. クレーン種類別の見積りポイント
- 天井クレーン: スパン・レール延長・台数を明記し、上限リミット点検や高所作業車の要否を条件に含める。
- 橋形/門形: 屋外条件(風・塩害)、走行路延長、高所作業車や仮設足場の必要性、退避・固定装置確認の有無を共有。
- ジブ・モノレール: カーブ・分岐・吊りボルト本数など構成を伝え、足場や補助作業の有無を確認。
- ポータブル門型: 組立・解体に要する時間と人員、キャスターや水平調整の作業範囲を見積り条件に入れる。
- スタッカークレーン: 制御・セーフティ試験の範囲(エリアセンサ、非常停止)、システム停止時間の許容枠を明確にする。
7. まとめと次のアクション
本記事のポイントを整理します。
- 点検は「停止損失を防ぐ投資」。月次で兆候を拾い、年次で総点検。
- 天井クレーン/橋形クレーンは環境と構造に応じて注視点が変わる。
- 費用は明細化し、追加条件と承認フローを事前合意して比較する。
- 未実施リスク(安全・稼働・法令・信頼)を具体例で共有し、社内合意を得る。
- 記録・写真・データを蓄積し、予防保全とCBMへ段階的に移行する。
次のステップとして、設備情報の整理→3社相見積り(同条件)→報告書サンプルと対応力の比較→年間計画と停止時間のすり合わせ、の順で進めれば、安全とコストの両立が現実的になります。
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