クレーン用語集|寄り・キャンバー・揚程など現場の基本用語をまとめて解説

クレーンの構造にかかわる用語
まず、クレーンがどんな部品でできているかを押さえます。見積書や点検報告書に出てくる名称は、ほとんどがここに含まれます。
ガーダ
天井クレーンの本体となる桁のことです。両端をエンドキャリッジで支え、この上をトロリが横行します。1本で構成するシングルガーダと、2本で構成するダブルガーダがあり、ダブルの方が重量物と長スパンに向きます。
エンドキャリッジ
ガーダの両端にあり、走行レールの上を移動する部分です。走行車輪と走行用の駆動装置が収まっています。ここが摩耗するとクレーン全体が斜めに走る(片流れする)原因になります。
トロリ
ガーダの上または下を左右に移動する台車で、巻上装置(ホイスト)を載せています。トロリが動くことを横行、クレーン全体が動くことを走行と呼び分けます。
巻上げ・巻下げ
吊り具を上下させる動作です。巻上げが上、巻下げが下。定格速度は分あたりの移動量(m/min)で表され、荷の種類と作業内容に応じて選定します。
寸法・能力にかかわる用語
クレーンを選ぶとき、また既存設備の能力を確認するときに使う言葉です。同じ「○トン吊り」でも、どの荷重を指しているかで意味が変わります。
寄り
吊り具が横行したときの停止位置と、走行レール中心との最小水平距離です。吊り荷をどこまで端に寄せられるかを示し、壁際や柱際の作業ができるかを左右します。設備配置を決める段階で確認すべき数値です。
キャンバー
ガーダにあらかじめ付けておく上向きのそりです。荷を吊ると桁はたわむため、たわみを見込んで逆方向に反らせて製造します。長スパンのガーダほど重要で、キャンバーが失われた(へたった)クレーンは更新の検討対象になります。
ジブ・傾斜角
ジブはクレーン本体から突き出した腕状の部分、傾斜角はジブと水平面との角度です。傾斜角が大きいほど作業半径は狭く、吊り高さは上がります。逆に傾斜角を寝かせると遠くへ届く代わりに吊れる荷重は下がります。
起伏
ジブが支点を中心に上下する動きです。起伏によって作業半径と吊り高さを変えます。荷を吊ったまま起伏させる作業は、能力の急変を伴うため特に注意が必要です。
作業半径
旋回中心から吊り荷の中心までの水平距離です。同じクレーンでも作業半径が大きくなるほど吊れる荷重は小さくなります。定格総荷重表はこの作業半径ごとに示されます。
作業範囲
クレーンが荷を扱える平面上の領域です。天井クレーンでは走行方向と横行方向の可動範囲で決まり、寄りの寸法によって端部の使える範囲が変わります。
揚程
吊り具を最も下げた位置から最も上げた位置までの垂直距離です。建屋の高さだけでなく、床のピットや設備の高さも踏まえて必要な揚程を決めます。
定格速度
定格荷重を吊った状態での各動作の速度です。巻上げ、横行、走行それぞれに定められます。速ければよいというものではなく、精密な据付作業では低速側の性能(微速)が効きます。
荷重に関する3つの言葉の違い
最も混同されるのが荷重の呼び分けです。ここを取り違えると、能力不足のクレーンを選ぶことになります。
| 用語 | 含むもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 吊上荷重 | 荷+吊り具 | 法令上の区分、設置の届出 |
| 定格荷重 | 荷のみ(吊り具を除く) | 実際に吊れる重さの判断 |
| 定格総荷重 | 荷+吊り具(作業半径ごと) | 移動式クレーンの能力表 |
たとえば吊上荷重2.8トンのクレーンでも、フックなど吊り具が0.3トンあれば、実際に吊れるのは2.5トンです。カタログの数字をそのまま荷の重さと比べないようにしてください。
吊上荷重
クレーンの構造と材料に応じて、吊り具の重さを含めて吊ることができる最大荷重です。法令上の区分(0.5トン以上でクレーン等安全規則の対象、3トン以上で設置届)はこの吊上荷重で判断します。
定格荷重
吊上荷重から、フックやグラブバケットなど吊り具の重量を差し引いた、実際に吊れる荷の重さです。現場で「何トン吊り」と言うときに意識すべきはこちらです。
定格総荷重
作業半径ごとに吊ることができる最大荷重で、吊り具の重量を含みます。移動式クレーンでは、この値が半径によって細かく変わります。
安全装置にかかわる用語
点検で作動確認が求められる装置です。名称と役割を知っておくと、点検報告書の指摘内容が理解しやすくなります。
過巻防止装置(巻過防止装置)
吊り具を上げすぎてワイヤーやチェーンを切ってしまうのを防ぐ装置です。上限で自動的に停止します。始業前点検で必ず作動を確認する項目です。
リミットスイッチ
可動部が決められた位置を超えないよう、電気的に停止させるスイッチです。過巻防止のほか、走行・横行の端部にも設けられます。
インターロック
危険な操作を機械的・電気的にできないようにする仕組みです。扉が開いている間は動かない、といった安全設計に使われます。
その他の頻出用語
クラブトロリ
巻上装置と横行装置を一体にした台車形式のトロリです。ダブルガーダのクレーンで一般的で、大きな荷重に対応します。
ホイスト
チェーンまたはワイヤーロープで荷を巻き上げる装置です。単体で梁に取り付けて使うほか、天井クレーンの巻上装置として組み込まれます。
スパン
走行レールの中心間の距離、つまりクレーンが渡っている幅です。スパンが長いほどガーダのたわみが大きくなり、キャンバーや桁せいの設計に影響します。
玉掛け
荷にワイヤーロープなどをかけて、クレーンで吊る作業です。吊上荷重1トン以上のクレーンで玉掛け業務を行うには技能講習の修了が必要です。
用語が分かると見積比較が正確になる
複数社から見積もりを取ったとき、金額だけを並べても比較になりません。スパン、揚程、定格荷重、寄りの4つが同じ条件で書かれているかを確認してください。1社だけ揚程が短い、寄りが大きいといった違いがあると、安く見えても実際の使い勝手が変わります。
点検の見積もりでも同様です。過巻防止装置やリミットスイッチの作動確認が項目に入っているか、年次と月次のどちらの内容かを、用語を手がかりに読み比べてください。
関連する内容として、点検の進め方は天井クレーンの点検項目、点検表の様式は天井クレーン点検表の無料テンプレートにまとめています。
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